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第三章・5

「その君の初めてを、私にくれないか」  甘く、低く耳元で囁く。  少々芝居がかった口調で、蕩けるような文句を紡ぐ。 「二人で、思い出を作ろう。な?」  頬に掌を当て、ゆったりと髪を掻き揚げてやる。  すると青葉の顔が上げられ、潤んだ瞳が見つめてきた。 「芳樹さん……」 「ぅん?」  これは乗ってきたか、と思った途端。 「何だか、喋り方が変です」 「……ッ!」  そりゃあ、君があんまり魅力的だからだよ、と、もう自棄になって不意打ちでキスをした。  青葉は瞬間的に身を固くしたが、さっきのように拒みはしなかった。  短いキスを、ひとつ。  息を整え、すこし長いキスを、二つ。  瞳を合わせ、充分に潤ったキスを、三つ。  そのまま芳樹は、青葉の身体に覆いかぶさっていった。

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