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第四章・5

 翌日、芳樹と青葉の二人は繁華街へ繰り出した。  安藤邸が世界の全てだった青葉にとって、外の空気は新鮮だ。  きょろきょろと周りを見回したり、立ち止まって、珍しい看板を眺めたり。  その度に迷子になりそうなので、芳樹は青葉の手を握った。 「離れないように、ね」 「すみません」  握られた芳樹の手。  大きく、固く、温かだった。 (そう言えば、智貴さまは手をつないではくださらなかったな)  やがて青葉は、オーダースーツ専門店へと連れて行かれた。  老舗の雰囲気をまとうその店に入ると、愛層のいいテーラーが出迎えた。 「これは七浦さま。今回は、どのようなお仕立てを? イタリアのいい生地が入っておりますが」 「今日は私ではなく、この子に作ってもらうよ」 「お若いですね。でしたら、お色はネイビーになさいますか?」 「彼に決めてもらうよ。細かいところは、私が指示しよう」 「いつものように、フルオーダーで?」 「あまり時間が無い。イージーオーダーで頼む」 「かしこまりました」  生地を選び、採寸をし、型紙を選び……。  全て終わった時には、青葉はクタクタになっていた。 「楽しかったろ?」 「疲れました……」  では、お茶でも飲んで疲れを取ろう、と芳樹は青葉を連れて喫茶店に入った。

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