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第四章・6

 店内に入った青葉は、その香りを深く吸った。  コーヒーの匂い。  様々な人間が色々なコーヒーを味わい、その香りでお喋りでもしているかのようだ。 「はい、メニューだ」 「ありがとうございます」  コーヒー専門店だが、紅茶も少し置いてある。  それを見て芳樹は、くすくすと笑った。 「いいよ、紅茶を頼んでも」 「いえ」  青葉は、赤くなった。  昨日、芳樹のマンションで意地を張って紅茶を飲んだことを思いだしたのだ。  それを思い出し、恥ずかしくなった。 (今こうして隣に座ってらっしゃる芳樹さんは、初対面の時とはずいぶん違う印象だな)  切れ長の鋭い目つきで、観察するように青葉を見ていた彼の目は、今はただ穏やかだ。 (智貴さまもそうだったけど、やっぱりαの人って優しいのかな)  情事の疲れで寝坊した青葉の代わりに、朝食を作って待っていてくれた。  スーツを作る間中、いろいろとアドバイスをし、時間を割いてくれた。

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