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第六章・4
芳樹は、ソファで電話を掛けていた。
相手は、智貴。
先だっての非礼を詫びに掛けたのだが、青葉は安藤邸に来ていない、という言葉に動転した。
「いや、私は。もしよろしかったら彼をお返ししてもいいとさえ思ってよこしたのですが」
『おかしいですね。加古は私の元には来ませんでしたよ。時刻的には、お茶を飲んでいたので、簡単に会える状態でしたのに』
妙だ、と感じつつも、芳樹は重ねて智貴に謝り、通話を切った。
「青葉、どこへ行ったんだ」
電話をしても、出ない。
まさか、なにか事件に巻き込まれたのでは。
そんな不安さえ、頭をもたげてくる。
遅くなるようだったら警察に捜索願を、とまで考えながら外へ出た。
ゆっくりと、安藤邸までの道を車で見て回るつもりだった。
だがしかし。
「青葉?」
青葉が、マンションの植え込みの陰に座り込んでいるのだ。
「どうしたんだ、こんなところで。心配したぞ」
「芳樹さん」
芳樹の声に顔を上げた青葉の表情に、どきりとした。
目は泣きはらして赤く、唇は紫色。
ひどく弱弱しい。
(何か、あったな)
そう芳樹が想像することは、容易かった。
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