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第六章・6

 芳樹がミルクティーを淹れる間、青葉はうなだれてソファに座っていた。 「さぁ、特製のミルクティーだ。飲んで温まってくれ」 「ありがとうございます」  青葉は、芳樹の淹れたお茶を、機械的に飲んだ。  だが一口含むと、お茶から芳樹の想いがいっぱいに広がってきた。  いい香り。ほどよい甘みと、豊かなコク。  これまで智貴のために、何杯ものお茶を淹れてきた青葉だからこそ、その価値が解る。 (芳樹さんは、心から僕のことを心配してくださっているんだ)  大切に、青葉はミルクティーを飲んだ。  芳樹の想いを汲み取るように、飲み干した。  飲んでしまって、ふぅと息をつくと、あれだけ苦しかった心が少し軽くなっていた。 「実は」  そう、青葉の方から話を始めた。 「実は、智貴さまは新しい家事使用人をお傍に置いておいででした」  芳樹は、息を呑んだ。 (安藤さんは、青葉の代わりをすでに作ったということか)  ロマンチストだとばかり思っていたが、なかなかにしたたかなことだ。  青葉を慰めようと、芳樹は言葉を選んで返事をした。 「家事使用人は、何人でもいるだろう。たまたま傍にいたんじゃないか?」 「違うんです。特別な人なんです」  青葉は、安藤邸で盗み聞いた二人の会話を芳樹に語った。 「あの人はもう、智貴さまの愛を。お情けを何度でも受けているんです。そして、今夜も」  芳樹は、とまどった。  返す言葉が見当たらない。  だが、自分がなすべきことは充分心得ていた。

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