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第六章・7

「青葉」  芳樹は、青葉の華奢な体を抱きしめた。  ただ抱きしめ、自分の熱を彼に与えた。  冷え切った心を温めるように、話した。 「本当は、安藤さんのところへ帰したくはなかった」 「芳樹さん?」 「もう、ここへは戻っては来ないだろうと思ってた」  そう考えると、無性に淋しくてね。  青葉は返事をしなかったが、芳樹は淡々と語った。 「青葉、君を初めて見た時、私の胸は躍ったよ。何て綺麗な子だろう、ってね。そして、綺麗なだけじゃない。とても利発だ。そんな少年が傍にいてくれたら、素敵だろうな、って」 「……」 「パートナーになって欲しい、というのは本心だ。飾りや玩具じゃない、対等の人間として傍にいて欲しい。偽装結婚、何て言ったけど、今は違う。本気で結婚して欲しいくらいだ」  ただ、と芳樹の声はトーンを落とした。 「安藤さんから無理やり奪ったことは、悔いている。ごめんよ、青葉」 「芳樹さん、僕は」 「好きだ、青葉」 「芳樹さん」  芳樹は青葉に、口づけた。  ほのかに甘い、ミルクティーの味がした。  青葉は芳樹と、キスをした。  かすかに苦い、コーヒーの味がした。

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