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第七章 決別

 夜、芳樹は自宅マンションで、遅くまで仕事をしていた。  明日の会議までに、10の案件に対する意見と、その根拠をまとめておかなければならないのだ。  そこへ、ふと背後のドアが開く気配がした。 「芳樹さん」 「青葉。どうした? 眠れないのか」  青葉の手には、トレイがあった。  そしてその上には、ホットレモネードが温かな湯気を立てている。 「遅くまで、お疲れ様です」 「ああ、ありがとう。一息つこうかな」  デスクを離れ、芳樹はソファにくつろいだ。  その隣をポンポンと叩いて、青葉に座るよう促した。 「傍にいてやれなくて、ごめんな。今日は辛い目に遭ったのに」 「いいえ。形は違えど、智貴さまとの決別はつきました」  安藤邸に二週間ぶりに帰った、青葉。  しかしそこに待っていたのは、あまりに早い智貴の心変わりだった。 「ちゃんと、しっかり泣いたかい?」 「はい」  そうは言っても、まだ彼の心からは血が流れているに違いない。

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