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第八章 青葉への宿題
「今日のお茶菓子は、何にしようかな」
日中は会社へ出る事の多い芳樹のために、青葉は百貨店のスウィーツコーナーを覗いていた。
『どうしてご自分で? 身の回りのお世話をする人間はいないのですか?』
『自分でできることは、自分でやるさ。その方が手っ取り早い。好み云々もあるしね』
以前、そんな会話をした二人だが、青葉は安藤家にいた頃の癖が抜けずに、よく芳樹の世話を焼いた。
そして芳樹も、そんな青葉をたしなめもせず、いや、返って喜んで受け入れていた。
『青葉は、こんな風に洗濯物をたたむのか~。なるほど』
『君の作るポトフには、カブが入ってるんだね』
『ルームフレグランス変えた? 新鮮だよ』
そんな芳樹の反応が嬉しくて、青葉は毎日食後のコーヒーに甘いものを出すようになっていた。
会社で疲れた体と頭に、甘いものはなかなか素敵だ、と芳樹が褒めてくれたせいもあった。
「昨夜はチェリーパイだったから、今日は……」
なかなか思いつかない。
どれも美味しそうだが、どの店舗の菓子も一度買ってしまった。
「ショッピングモールの方へ、行ってみよう」
青葉は百貨店を出て、アーケードを歩き始めた。
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