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第八章・3

 すぐに初老の男性がやって来て、抹茶を点ててくれた。 「以前は女性もいたんですがね。こんなおじさんで、すみませんね」 「いいえ、慣れてらっしゃいますね。お茶もすごく美味しいです」  そして、肝心の薯蕷饅頭だが。 「……美味しい!」  薯蕷饅頭はシンプルなだけに、職人の腕が物を言う。  青葉は心の中で、この店に星を三つ付けた。 「あの。お土産に少し、買って帰りたいんですけど」 「いいですよ。ゆっくりお茶を飲んでから、お選びください」 「ありがとうございます」  畳の小部屋でゆったりとした気分を味わい、青葉は思った。 「いつかここに、芳樹さんと一緒に来たいな」  最近、やけに忙しそうな芳樹さん。  ここで、のんびりとしたひとときを味わっていただきたい。 「今日は、お菓子だけで我慢してもらおう」  青葉はお茶を飲み終えると、薯蕷饅頭と季節の練り切り、栗鹿の子を買ってマンションへ帰った。

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