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第八章・5
「もうすぐハロウィンだろう? 七浦家は毎年、近隣の児童養護施設にお菓子を寄贈してるんだ」
「ハロウィンのお菓子を、ですか」
「そう。でも毎年のことだからね。飽きられてないか、なんて思っちゃって」
子どもたちは皆、お菓子を喜んで受け取ってくれる。
だがそれは、ほんの一時のこと。
「お菓子は食べると消えちゃうだろう。何かこう、後まで残るような。思い出に変わるような、素敵なアイデアが無いかなぁ」
「難しいですね」
「なんとなく、でいいから。青葉、心の片隅に置いていてよ。そして、何かいい考えを思いついたら教えてくれ」
「はい」
いい返事をしたものの、青葉の悩みは始まった。
それからの青葉の胸から、ハロウィンが消えることはなくなった。
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