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第十章・3

「ごめんな、青葉」 「いえ、これも風情があります」  油断していたのは、青葉だけではなかった。  月曜日に降るはずだった雨が、見事に土日にずれ込んだ。  芳樹のキャンプは、全て晴れを見越して計画されていたのだ。 「秋の天気は変わりやすいってこと、すっかり忘れてたよ」 「雨に濡れた紅葉も、美しいです」  青葉はそう言って慰めてくれるが、逆に肩身の狭くなる芳樹だ。 (ホントなら、釣りに行って、トレッキングして、焚火で料理して、星空を眺めて……)  だがしかし! 「せっかくだから、焚火だけでも青葉に楽しんで欲しいな。良い薪を準備してきたんだ」 「雨の日でも、焚火ができるんですか?」 「小降りになって来たし、タープの下でやろう。ポールを高くすれば、何とかいける」  そうと決まれば、と芳樹はさっそく動き始めた。  タープポールを一番高く設置し、天井を3mほどまで高くした。  これだけ高ければ、火の粉でタープに穴が開くことはないだろう。  着火剤を大目に使い、一気に火をつける。  薪は横にして燃やし、火を小さく保って焚火の完成だ。  これらの作業をよどみなくサッサとこなした芳樹に、青葉は感動していた。

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