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第十章・4
「芳樹さん、すごいですね! 手慣れた感じがします」
「大学時代にね、友達に教えてもらったんだよ。アウトドアが好きな友達に」
そんなことより、と芳樹は青葉を焚火の近くへいざなった。
「掛けて。今、コーヒーを淹れるから」
「はい」
オレンジ色の炎を眺めていると、心が安らぐ。
コーヒーポットの湯が沸く間、青葉はその炎から良い香りがすることに気づいた。
「芳樹さん、何か良い匂いしませんか?」
「さすが青葉だね。気づいてくれると思ってたよ」
芳樹は、薪を一本青葉に手渡した。
手に取った薪からは、かすかに炎と同じ香りがする。
「サクラの木の薪さ。独特の香りが好まれるんだ」
「すごい……」
青葉は、サクラの香りを胸いっぱい吸った。
ああ、いい香り。
来年の春、僕はどんな風にサクラの花を見るんだろう。
(芳樹さんと一緒に見られたら、いいな)
「サクラの香りは、気に入ってくれた?」
「はい。とっても」
そこで青葉は、くしゃみを一つした。
日が暮れて、寒くなってきたのだ。
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