73 / 169

第十章・6

「さあ! 寝るぞ!」 「芳樹さん。このシェラフ、やたら広くないですか?」  大きなテントの中には、これまた大きな寝袋が準備されていた。 「ファミリーサイズだからね。親子川の字になっても寝られるぞ」  そして、と芳樹はシェラフに潜り込み、青葉に手招きした。 「二人で寝ても充分広い、というわけさ」 「はいはい」  要するに芳樹さんは、この広いシェラフの中で僕とイイことをしたいんだ。  少し頬を染め、青葉は芳樹の隣に体を滑り込ませた。 「二人でこうやってくっついて寝れば、寒いことなんかない。秋キャンプの醍醐味だ」 「それが究極の狙いですか!」 「青葉も言うようになったねぇ」  ちゅ、と音を立てて、芳樹は青葉の鼻にキスをした。  そして、言うのだ。  蕩けるような、まなざしで。 「青葉、……いい?」 「……はい、どうぞ」  お許しが出たので、芳樹は青葉に口づけた。  長くて甘い夜が、幕を開けた。

ともだちにシェアしよう!