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第十章・6
「さあ! 寝るぞ!」
「芳樹さん。このシェラフ、やたら広くないですか?」
大きなテントの中には、これまた大きな寝袋が準備されていた。
「ファミリーサイズだからね。親子川の字になっても寝られるぞ」
そして、と芳樹はシェラフに潜り込み、青葉に手招きした。
「二人で寝ても充分広い、というわけさ」
「はいはい」
要するに芳樹さんは、この広いシェラフの中で僕とイイことをしたいんだ。
少し頬を染め、青葉は芳樹の隣に体を滑り込ませた。
「二人でこうやってくっついて寝れば、寒いことなんかない。秋キャンプの醍醐味だ」
「それが究極の狙いですか!」
「青葉も言うようになったねぇ」
ちゅ、と音を立てて、芳樹は青葉の鼻にキスをした。
そして、言うのだ。
蕩けるような、まなざしで。
「青葉、……いい?」
「……はい、どうぞ」
お許しが出たので、芳樹は青葉に口づけた。
長くて甘い夜が、幕を開けた。
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