79 / 169

第十一章・6

 乱れる息を整えながら、手探りで青葉はウェットティッシュを取った。  芳樹をきれいにしてやるつもりだったが、逆に取り上げられてしまった。 「ダメ。青葉が先」 「でも、僕。芳樹さんの体の上に粗相を」  確かに、騎乗位の青葉が射精したのだ。芳樹の服は、汚れている。  それでも構わず、芳樹は青葉の体をていねいに拭き始めた。 「青葉、裸なんだよ? 風邪ひいたら、どうするのさ」 「あ……」 「冷たいけど、我慢してくれ」 「はい」  芳樹の心配りをありがたく受け取り、青葉は幸せを噛みしめていた。 「芳樹さん。秋キャンプ、素敵でした」 「解ってくれた?」 「また来年も……、来たいな……」 「最優先事項として、スケジュールに入れておくよ」  服を着終えた青葉は、そのまま芳樹の胸に飛び込んだ。  一分でも早く、一秒でも長く、その胸に抱かれたかった。 「おいおい、服が汚れるぞ。私の方はまだ」 「芳樹さん、好きです」 「……初めて言ってくれたね」 「芳樹さん、愛してます」 「私も愛してるよ、青葉」  雨音が、二人を優しく包み込んでいた。

ともだちにシェアしよう!