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第十四章 お見合い
「ただいま」
「あれ? 芳樹さん、もうお帰りですか?」
1月1日の23時、芳樹は郷里の七浦家からさっさとマンションへ戻ってきた。
年始の挨拶に、親類や各界の名士が次から次へとやってくる七浦の家。
家長の父と共に、嫡男の芳樹も挨拶をしていたが、いいかげん嫌になったのだと言う。
「妙なお世辞を喋るしか能のない人間を相手にするより、青葉と一緒にいた方がいい」
「でも、お父様はお困りではないんですか?」
「構いやしないさ。あんな分からず屋」
ソファにどさりと腰を落とし、芳樹は天井を見上げて息を吐いた。
キッチンで、青葉がコーヒーの準備をしてくれる音がする。
「私は、こんなささやかな幸せを願うだけなのに」
私がいて、傍に青葉がいる。
それだけで、満ち足りた気持ちになる。
だが芳樹の父・義人は青葉を婚約者と認めようとしない。
芳樹の母・紗香(さやか)は青葉との結婚を許さない。
はぁ、と何度目かの溜息をついた時、香り高いコーヒーが運ばれてきた。
「お疲れでしょう? 温まってください」
「ありがとう」
青葉は、黙って芳樹を見ていた。
『構いやしないさ。あんな分からず屋』
芳樹の言葉の裏にある事実を、青葉は悟っていた。
(芳樹さんのお父様は、僕との結婚に反対なんだ)
唇を噛んで、耐えた。
身分違いの恋は、青葉自身が一番よく解っていた。
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