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第十四章・3

「青葉、どのスーツがいいと思う?」  松の明けた10日、芳樹はクローゼットの前にスーツを並べて迷っていた。 「芳樹さんがファッションでお悩みだなんて。珍しいですね」 「今度、大事な方と会食することになってね。ドジは踏めないんだ」  正月明けだから、明るい色にするか。  はたまた、初対面の相手に、誠実さをアピールするか。 「この、チョークストライプはどうですか? 紳士的に見えます」 「さすが青葉。これを選んでくれるとはね」  これに決めた、と芳樹は一着のスーツを取り上げた。 「では、あとはシャツとネクタイとベルトとソックスとハンカチと靴をコーディネイトしましょう」 「青葉がいてくれると、楽ができるよ。ありがとう」 「どういたしまして」  小物を決めながら、芳樹は会食の相手の話をした。 「お父様が縁を繋いでくださった方なんだけどね。帝都銀行の頭取さん」 「……帝都銀行!?」  日本で知らない人はいないほどの、巨大バンクだ。  青葉は、素直に驚いていた。 「今後、取引ができるかどうかは、お前にかかっている! とか何とか、言ってたよ」 「それは、気を引き締めてかからないといけませんね」 「疲れるだろうな。帰ったら、青葉が癒してくれ」 「喜んで」  その三日後、芳樹は勇んで頭取との会食に出掛けて行った。

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