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第十四章・5

 会食中は、主に息子の自慢話を二人の父親はしていた。 「怜くんは、留学の予定は? 芳樹はハーバードを出ましたが」 「オックスフォードへと考えております。怜の兄も、そこを出ましたから」  そんな会話を耳にしながら、芳樹は怜をうかがっていた。 (見れば見るほど、そっくりだ)  さすがに纏う空気は一流企業の御曹司だけあって、少々固い。  青葉の持つ優しい雰囲気とは、明らかに違う色をしている。  そして、この会食の真のねらいを見抜いていた。 (これは、怜くんと私のお見合いなんだ)  父親の自慢合戦は、ある意味お互いを知るための情報。  耳に入ってくれば、この目の前の少年の履歴が解るのだ。  自分で根掘り葉掘り訊く必要もない、というわけだ。 (お父様、私をはめましたね)  心の中で父に毒づきながらも、怜は今どんな心地でいるんだろう、と芳樹は考えていた。  18歳の若さでは、まだ自分の未来も構築できていないだろう。  そんな時に、将来のパートナーを父親に勝手に決められる。 (何だか、可哀想だな)  しかし芳樹は、怜がどんな眼差しで自分を見ているか、までには心が及ばなかった。

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