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第十六章・4

 青葉は両ひざにこぶしを握り締め、下を向いて震えていた。 「青葉、すまない。いっぺんに、いろんなことを詰め込み過ぎたな」  芳樹は彼の隣に座りなおすと、そのこぶしに手を乗せ撫でた。  倉崎も声音を柔らかくし、静かに青葉へ声をかけた。 「土門家に戻るかどうかは、君の好きにするといいよ。ゆっくり考えるといい」 「はい」  その日は青葉の出生の秘密を明らかにしただけで、二人は事務所を後にした。  帰り道のハンドルを操りながら、芳樹は気軽さを装って青葉に話しかけた。 「まさか青葉が、日本でも有数の資産家の御曹司だった、なんてね」 「僕も、驚きました……」  声がまだ、弱弱しい。  無理もない、と芳樹は思った。  突然、途方もない家族ができたのだ。  双子の兄弟まで、現れたのだ。  頭では解っていても、心が付いて行かないだろう。 「ね、青葉。双子のお兄様に、会いたくないか?」 「僕の、お兄様」  そうさ、と芳樹は言った。 「私のお見合い相手が、そのお兄様なんだ。会おうと思えば、いつでも引き合わせることができるよ」 「もう少し、考えさせてください」 「いいよ」  二人を乗せたマスタングは、マンションの駐車場へと入っていった。

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