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第十六章・5

 マンションに戻った青葉は、普段と変わらず振舞った。  掃除をし、洗濯をし、食事を作った。  先ほど知った驚愕の事実の話は、一言も話さなかった。  芳樹も、そんな彼の気持ちに気づいて、話題にすることは避けた。  バスを使い、ベッドに潜り、明かりを落としても、青葉は寝付けなかった。 「お兄様。僕の、双子のお兄様」  掛布を、頭から被った。  会いたい。  会って、話をしてみたい。  だが、青葉は恐れていた。  自分の存在を明るみにした後の、土門家の騒動が目に見えるようだ。 「お兄様は、僕が財産目当てで姿を現したと思うかもしれない」  ぎゅう、と目を閉じた。  それだけは、イヤだ。  僕はただ、一目でいいから会って、一言でいいから言葉を交わしてみたいだけなのに。  なかなか寝付けない青葉を、背後から芳樹は見守っていた。 (苦しいんだな、青葉)  今はただ、彼を見守ってあげることしかできない自分が、もどかしかった。

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