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第十九章・3
「七浦、青葉くんは今日中に入院してもらう」
医師らしく、引き締まった面立ちで久保にそう言われ、芳樹は嫌な予感がした。
「悪いのか?」
「本人に告知しても構わないだろうか」
逆に問いかけられ、芳樹は腹をくくった。
(これは、癌だな)
「青葉は強くて頭のいい子だ。問題ないと思う」
「了解した」
そして二人は、別室で待っている青葉の元へ進んだ。
看護師と二人で、青葉は丸椅子にちょこんと座っている。
その姿に、芳樹は先ほど久保に答えたことを後悔した。
青葉は確かに、強くて賢い。
だが、まだ18歳の少年なのだ。
未来ある若者に、癌の告知は酷すぎやしないだろうか。
迷いの生じた芳樹に久保は気づいていたが、青葉に切り出した。
「今から青葉くんは、この病院に入院してもらいます。病名を知りたいかな。本人の希望によっては、話さないことにもなるが」
明日明後日ではなく、今すぐ、という点に、青葉は勘付いた。
ああ、僕はきっと、何か重い病気にかかったんだな。
そんな風に、理解した。
だから、勇気をもって久保に答えた。
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