135 / 169

第十九章・4

「どうか、病名を教えてください。名前も知らない病気と闘う方が不安ですから」  久保は、芳樹の方をちらりと見た。 (さすが、七浦の連れてる子だけあって、肝が据わってる)  芳樹、そして青葉の了承を得たうえで、久保は病名を明らかにした。 「青葉くんは、急性骨髄性白血病です」  癌だ、と予想していたはずなのに、いざハッキリとそう告げられると、芳樹は震えた。  大丈夫、治る。  治るに決まってる。  心の中でそう唱え、青葉の手を握った。 「治療してみないことには、何も解らない。まずは、抗がん剤治療を始めよう」 「解りました」  青葉は凛とした顔で、芳樹の手を握り返した。 「僕、きっと治ってみせますから」  その表情は、まさに臨戦態勢。  病と闘う覚悟が、できている。  一方の芳樹は、動揺した自分を恥じていた。 (私が不安がっていては、ダメだ。青葉を、信じるんだ) 「治ったら、結婚しよう。婚姻届けを準備しておくよ」  青葉の指には、芳樹が贈った指輪が輝いていた。

ともだちにシェアしよう!