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第十九章・4
「どうか、病名を教えてください。名前も知らない病気と闘う方が不安ですから」
久保は、芳樹の方をちらりと見た。
(さすが、七浦の連れてる子だけあって、肝が据わってる)
芳樹、そして青葉の了承を得たうえで、久保は病名を明らかにした。
「青葉くんは、急性骨髄性白血病です」
癌だ、と予想していたはずなのに、いざハッキリとそう告げられると、芳樹は震えた。
大丈夫、治る。
治るに決まってる。
心の中でそう唱え、青葉の手を握った。
「治療してみないことには、何も解らない。まずは、抗がん剤治療を始めよう」
「解りました」
青葉は凛とした顔で、芳樹の手を握り返した。
「僕、きっと治ってみせますから」
その表情は、まさに臨戦態勢。
病と闘う覚悟が、できている。
一方の芳樹は、動揺した自分を恥じていた。
(私が不安がっていては、ダメだ。青葉を、信じるんだ)
「治ったら、結婚しよう。婚姻届けを準備しておくよ」
青葉の指には、芳樹が贈った指輪が輝いていた。
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