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第二十章 怜の想い
芳樹からの電話に出た怜は、すぐに青葉について訊いてきた。
『青葉くんに、何かあったんですか?』
「いや、病状は変わりない」
『そうですか……』
怜の声のトーンが落ちる。
病状に変わりない、ということは、じょじょに弱っている、ということだ。
青葉がもう、声も出せないほどに衰弱していることは、芳樹からの電話で聞いている怜だった。
青葉を見舞うのは、芳樹だけではなかった。
怜もまた、ためらいながらも彼を訪ねて病院へ足を運んだ。
だが、青葉とは一度も会っていない。
健康状態が悪いから、との理由で、病院が面会謝絶にしていることもあったが、その多くは青葉自身が怜に会いたくない、とのことだった。
『青葉くんは、どうして僕を避けるんでしょうか。僕は、やはり嫌われているんでしょうか』
「それは違うよ、怜くん。青葉は今、抗がん剤の副作用で可哀想なくらいぼろぼろになっている。そんな姿を、君に見せたくはないんだろう」
怜は、溜息をついた。
だが、そのぼろぼろの姿を芳樹には包み隠さず晒している。
どれほど二人の絆が深いかを知らされたようで、怜には切なかった。
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