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第二十章・2
実は今日、新しい治療の話が医師から伝えられた、との芳樹の声がやけに明るく怜の耳に響いた。
「骨髄移植、なんだけど」
『それには、ドナーが必要ですね』
「そのドナーに、怜くん。君になって欲しいんだ」
『僕に!? え、いや。それはそうですね』
時々忘れてしまうことがあるが、青葉とは一卵性の双子なのだ。
ドナーにこれほど最適な人間は、この世にいない。
「どうだろう。引き受けてくれるね?」
『いえ、ちょっと待ってください。そんな、急に』
「青葉を助けたくないのかい? 彼を救えるのは、君しかいないんだ。頼む!」
『解ってます。それは、解っています。でも!』
電話口で話すような内容ではない、と怜は言った。
「そうだな。すまなかったよ」
明日、会う約束をし、芳樹は怜との電話を終えた。
「青葉、絶対助けてやるからな」
春本番にはまだ少し早い空気が、肌に冷たく心地よかった。
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