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第二十章・5
「芳樹さん、父をうんと言わせる方法が、一つだけあります」
は、と芳樹は顔を上げた。
「何だろう、それは。私にできることなら、なんでもする」
「母は、僕がドナーになることを勧めてくれました。あとは、父を陥落させることができれば全てうまくいきます」
「うん」
それは、と怜は一度言葉を切った。
「僕と、結婚することです。結婚してください、芳樹さん。青葉くんを救う為にも」
「……ッ!?」
声を失った芳樹に、怜は畳みかけた。
「父は、この縁談を絶対に成功させたいと願っています。結婚を餌に、父の承諾を得ましょう」
「しかし、それは」
「万が一、それでも父が許さなくても、結婚してしまえば。僕が七浦の家に入れば、配偶者である芳樹さんの承諾を得てドナーになれます」
「解った」
「え?」
結婚しよう、と芳樹は言った。
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