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第二十一章・2

(私は青葉のことに夢中で、怜くんの気持ちをまるきり無視していた)  芳樹は、そんな風に考えた。  彼の、私に対する愛情に甘えすぎていた。  青葉を救うためだけの結婚、と利発な彼はすぐに勘付いたはずだ。 (土門さんが資産や家柄のために結婚を勧めることも、私が青葉のために結婚を承諾したことも、根っこの部分は同じだ)  あまりに怜をないがしろにした自分を、悔いた。  そこへ、怜の母・妙子が口を開いた。 「私は、怜が青葉くんのドナーになることに賛成です。青葉くんは、いえ、青葉も私の大切な息子。養子に出すことにも、反対だったのですから」 「妙子、そんな昔を蒸し返すな」 「昔? たった18年ですよ。私は18年間ずっと後悔し続けてきました」  もう、後悔はしたくない。  そう、妙子は言った。 「まずは、怜。青葉のドナーになりなさい。結婚の話はそれからです」  口をぱくぱくさせる芳樹に、妙子は厳しかった。 「このまま一緒になっても、怜は幸せにはなれません。七浦さん、そのわけは、自分の胸に手を当てて聞いてみれば解りますね?」 「……申し訳ありません」  芳樹は、妙子に頭を下げた。

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