149 / 169
第二十一章・2
(私は青葉のことに夢中で、怜くんの気持ちをまるきり無視していた)
芳樹は、そんな風に考えた。
彼の、私に対する愛情に甘えすぎていた。
青葉を救うためだけの結婚、と利発な彼はすぐに勘付いたはずだ。
(土門さんが資産や家柄のために結婚を勧めることも、私が青葉のために結婚を承諾したことも、根っこの部分は同じだ)
あまりに怜をないがしろにした自分を、悔いた。
そこへ、怜の母・妙子が口を開いた。
「私は、怜が青葉くんのドナーになることに賛成です。青葉くんは、いえ、青葉も私の大切な息子。養子に出すことにも、反対だったのですから」
「妙子、そんな昔を蒸し返すな」
「昔? たった18年ですよ。私は18年間ずっと後悔し続けてきました」
もう、後悔はしたくない。
そう、妙子は言った。
「まずは、怜。青葉のドナーになりなさい。結婚の話はそれからです」
口をぱくぱくさせる芳樹に、妙子は厳しかった。
「このまま一緒になっても、怜は幸せにはなれません。七浦さん、そのわけは、自分の胸に手を当てて聞いてみれば解りますね?」
「……申し訳ありません」
芳樹は、妙子に頭を下げた。
ともだちにシェアしよう!