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第二十一章・4
手術まで怜は、何度も同意の確認を取らされた。
『もしかしたら最悪死ぬかもしれませんが、それでもいいですね?』
そういった内容の説明を何度も受け、何度も同意しますと答えさせられた。
(青葉くんがそれで助かるのだったら、僕は死んでも構わない)
始めは、そんな半ば自棄の気持ちだった。
大好きな、芳樹さん。
愛する、芳樹さん。
彼の想いを一身に受け、青葉くんは幸せだね。
(芳樹さんと僕が、仮に結婚したとしても、その時彼は抜け殻なんだ)
怜は、芳樹を愛している。
あの愉快で優しく、それでいてちょっぴり自分勝手な男を愛している。
(芳樹さんは、芳樹さんでなきゃダメなんだ。そしてそれには、青葉くんが必要なんだ)
『もしかしたら最悪死ぬかもしれませんが、それでもいいですね?』
三度目の同意を求められたとき、怜の気持ちは変わっていた。
「同意します」
(僕は青葉くんと、彼を愛する芳樹さんのために、ドナーになったんだ)
きっと何事もなく手術を終え、幸せな二人の姿をこの目で確かめる。
怜の気持ちは、しっかりと固まっていた。
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