151 / 169

第二十一章・4

 手術まで怜は、何度も同意の確認を取らされた。 『もしかしたら最悪死ぬかもしれませんが、それでもいいですね?』  そういった内容の説明を何度も受け、何度も同意しますと答えさせられた。 (青葉くんがそれで助かるのだったら、僕は死んでも構わない)  始めは、そんな半ば自棄の気持ちだった。  大好きな、芳樹さん。  愛する、芳樹さん。  彼の想いを一身に受け、青葉くんは幸せだね。 (芳樹さんと僕が、仮に結婚したとしても、その時彼は抜け殻なんだ)  怜は、芳樹を愛している。  あの愉快で優しく、それでいてちょっぴり自分勝手な男を愛している。 (芳樹さんは、芳樹さんでなきゃダメなんだ。そしてそれには、青葉くんが必要なんだ) 『もしかしたら最悪死ぬかもしれませんが、それでもいいですね?』  三度目の同意を求められたとき、怜の気持ちは変わっていた。 「同意します」 (僕は青葉くんと、彼を愛する芳樹さんのために、ドナーになったんだ)  きっと何事もなく手術を終え、幸せな二人の姿をこの目で確かめる。  怜の気持ちは、しっかりと固まっていた。

ともだちにシェアしよう!