152 / 169

第二十一章・5

 骨髄移植の手術は、腰のあたりに2本の、箸くらいの太さの針を骨髄に刺す。  一度刺した場所からは少量の骨髄液しか採れないため、皮膚に刺した穴はそのままにして抜かず、角度を変えながら骨髄に100か所以上の穴をあけながら骨髄液を採るのだ。 「起きていたら激痛で耐えられないから、手術は、全身麻酔で寝ている間に終えるよ」  医師の久保は、怜にそう説明してくれた。  麻酔の前の導入剤は筋肉注射で、それはそれは痛かった。 (でも、青葉くんの痛みや苦しみに比べればこれくらい!)  そして、彼を愛する芳樹さん。  僕がこの痛みに耐えて、青葉くんへ骨髄液をあげることが、彼への愛の証。  意識が朦朧としてきた。 (そう言えば僕は、二人が一緒にいるところを一度しか見ていないな……) 『お兄様にお会いできて、僕は本当に嬉しいんです。これだけは、解ってください』 『僕は……、僕も、嬉しいよ。だけど、芳樹さんの愛人だなんて、あんまりだな』 『芳樹さん、この縁談は双方にとって利益を産みます。僕と、結婚しましょう。青葉くんは、愛人として認めます。だから』 (愛人だなんて、酷いことを言ったね。ごめんね、青葉くん……)  怜はそのまま意識を失い、目覚めた時には手術は終わっていた。

ともだちにシェアしよう!