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第二十一章・6
怜の骨髄液を移植された青葉の経過は、順調だった。
術後二週間で白血球が生着し、移植した造血幹細胞が骨髄で新しい血液をつくりはじめたのだ。
「もう、大丈夫だな?」
「そう急くな。血球や血小板数の増加がみられるまでは、赤血球および血小板の輸血を続けないといけない」
芳樹と久保は、病院のロビーで話をしていた。
「しかし、今回は本当に世話になったな。改めて礼を言うよ、ありがとう」
「ぅん? やけに素直だな。お前、そんな性格だったっけ?」
照れ笑いをしながら芳樹は、青葉に感化された、と言った。
「彼は本当に素敵な子で。素直だし、賢いし、優しい心を持っているし……」
「いきなりノロケだすなよ。そう言えば、あの双子のドナーは? 彼と結婚するのか?」
それが、と芳樹は指を組んだ。
「彼の方から、結婚を断ってきた」
「え? あの子はドナーになることと引き換えに、結婚を迫ってきたはずだろ?」
「うん……」
『芳樹さんを青葉くんから引き離すことなど、到底できないことを僕は悟りました』
泣き笑いの笑顔で、怜はそう言ってくれたのだ。
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