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第2話
実際に恋人としてつき合い始めたのは大学生になってからだったが、じぶんの嗜好のあれこれは東雲の影響がとても大きいと思う。
東雲はきれいなものや楽しいものを見るのが好きで、デートのときは美術館や博物館によく連れて行かれた。
学校行事以外で美術館など行ったこともなかった祐樹には、そんなデートはとても新鮮だった。
華道家らしく四季折々の自然や花を追って、ドライブがてら季節の花や山の景観を見たり、雪景色や紅葉を見に渓谷に行ったりもした。
かと思えば、大人らしく夜遊びもけっこうしていて、隠れ家的なレストランやバーでのふるまいや酒の飲み方を教えてくれたのも東雲だった。
つき合いはじめのころは未成年だからと連れて行ってくれなかったが、つき合いが深くなってくると、なじみのバーにも一緒に遊びに行き、「噂の年下のかわいい彼氏」と東雲の友人たちに騒がれたりもした。
東雲が誕生日やクリスマスに贈ってくれるカバンや靴や服も、祐樹がそれまで使っていたものとは違っていた。
きちんと体に合わせてオーダーした靴やシャツに、上質ってこういうものをいうんだと教えられた。
そしてホテルの使い方からもちろんセックスに至るまで、10代の最後から20代の初めを彼の恋人として過ごして祐樹が得たものはとても多い。
もしいま10歳下の男の子を好きになったら、と祐樹は想像してみる。じぶんは告白するだろうか。大学生の男の子。
……ちょっと想像がつかなかった。
いや、きっとできないだろう。両思いだとわかっていながら、5年前の19歳の孝弘にだって告白できなかったくらいだ。
臆病なじぶんが10歳も年下の同性を口説けるとは思えない。
東雲は勇気があったな、と今になって感慨深く思う。
華道師範という感性勝負の職に就いていたからなのか、東雲には見た目に反してずいぶん子供っぽいところもあって、そのギャップがとても魅力的だった。
年上の人なのにかわいいと思うことがたまにあって、でも仕事に一途で妥協しないでじぶんの世界観を追及する姿がとても恰好よかった。
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