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第4話
カットを終えてデパートに来たものの、さて何を贈ればいいものかと、祐樹はメンズフロアを回りながらちょっと途方に暮れる。
いまの彼の好みは当然知らないし、そうなると消え物がいいのだろうとは思っても食べ物はお祝いとしてはつまらない。
いや、おいしい日本酒とかワインならいいだろうか。でも取り寄せに時間がかかるものは困る。
それとも気のきいた消耗品であまり長くは手元に残らないもの、趣味にこだわり過ぎないもの…と思うと選択肢はあまりない。
あるいは日常に使えるようなネクタイ、ライター、キーケース…。
いっそ消え物とかにこだわらず、お祝いなのだから花器でも贈ろうか。それこそいくつあっても困るものではないだろう。
目のまえのウィンドウに飾られている品々を眺めながら考える。
東雲とは2年半ほどつき合った。祐樹にとって初めての同性の恋人で、同性とつき合うことに情緒的にまだ不安定だった祐樹を、大人の包容力でしっかり受け止めてくれた人だ。
そういえば、達樹に東雲とのデートを見つかって、問い詰められたことがあったな。
あの時の、達樹の困惑しきった顔を思い出す。
「あのさ、祐樹。訊きたいことあんだけど」
部屋に来た達樹がものすごく言いにくそうに切り出してきたとき、祐樹はとうとうこういう時がきたのかとひそかに覚悟を決めた。
「この前、って先週の土曜だけど。ある店で祐樹を見かけたんだけど」
「うん」
先週土曜のある店という言葉でだいたいのことは予想がついた。
「けっこう年上っぽい人と一緒だったけど、あれって誰?」
「…その人とおれ、何してた?」
「何って…。なんていうか、…すげー仲よさそうだったから」
言いにくそうに、達樹は言葉を濁す。
そこは表からはわからないしそういう看板もだしていないが、店のマスターがゲイなので比較的同じ嗜好の者が集う場所だった。
達樹はどういうわけか、その店に遊びに来たらしい。
「…もしかして、キスしてた?」
「王様ゲームか? なあ、そうだろ。あれ、誰だよ?」
達樹はかなり動揺しているようだった。コンパでもないのにふたりで王様ゲームはないだろう。前から決めてあったとおり、正直に答えることにした。
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