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第5話

「恋人だよ、いまつき合ってる人」 「って、男だったじゃん」 「うん。彼氏っていったほうがいい?」 「同じだよ! だってお前、高校のときはずっと彼女がいたじゃんか」  混乱したように祐樹を睨みつけてくる。 「うん。じぶんなりに頑張ってつき合ってたんだ。おれに合う女の子がいればいいなと思って色んなタイプの子とつき合ってみたけど、女の子は無理なんだってわかっただけだった」  達樹はしばらく黙っていた。次々と彼女を替えた高校時代の祐樹を思い出したのか、おそるおそる達樹は尋ねた。 「祐樹って、男が好きなのか?」 「そうみたい。恋愛するなら男性がいいんだ」  平然と答えた祐樹を、達樹は信じられないものを見る目で見つめて、それから諭すような口ぶりで言った。 「それはたまたまその子たちが合わなかっただけじゃないのか? それかあれかな、祐樹はどっちもいけるタイプで、いまがたまたま男性に魅かれてるだけで、そのうちまた女の子とつき合うこともあるんじゃないのか?」  思いがけない打明け話に達樹はかなり動揺していた。祐樹の言葉を受け入れ難いようだ。 「無理だと思うよ。目がいくのって男性ばかりだから」 「…ひょっとして、勃たねーの?」  ぼそっと、身内ならではの直球を達樹が投げてくる。祐樹はそれにも正直に答えた。 「そうじゃないけど。女の子ともセックスはできる。でも気持ちはないっていうか、物理的に触れば反応するってだけで、抱きたいなんて1回も思ったことないんだ」  祐樹の返事に、達樹は毒気を抜かれたようにぽかんとしている。  理解が追い付かないようで、え、でもとちいさくつぶやく。混乱した表情のまま、首をかしげて子供のような口調で訊いた。 「…男とセックス、できるのか?」  そんなことを想像したこともないのがよくわかる、素朴な響きだった。 「するよ、ふつうに。つき合ってるって言ったでしょ。男女でつき合ってるのと同じだよ。好きだからキスもするしセックスもする」  男同士の恋愛など考えたこともなかった達樹は理解不能といった困惑顔のまま、ぎくしゃくとうなずいた。  弟が男とセックスしているという現実に思考が停止したらしい。

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