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第7話

 わかってもらえるとは思わない。  3人の兄はふつうに女性とつき合っていて、しかもけっこうもてる。長兄は今年、結婚も決まった。そんな中、どうしてじぶんだけが女性と恋愛できないのか。  祐樹自身にもわからないのに、達樹にわかってもらえるとは思えなかった。身内に気持ち悪いと思われるのは辛いけれど、罵られても仕方がないと覚悟はしていた。  言葉が見つからないのか、達樹はしばらく口を開かずに祐樹を見つめていた。  その表情に嫌悪感や拒否感と言ったものは感じられない。ただ告げられた内容にすこし眉をひそめて、じっと考え込んでいる。 「それで、お前は大丈夫なのか?」 「わからないけど……将来的なことは」  不安はいろいろある。  でも考えても仕方のないことだ。  努力ではどうしようもなかったのだから。 「まあそうだよな、悪かった。問い詰めるなんて無神経だったな」 「ううん、いいよ。…それから、あの人は男性では初めての恋人で、もう1年くらいつき合ってる人。べつに遊びとかじゃない」 「そうか。いい奴か? ずいぶん年上っぽかったよな?」 「うん。ちゃんとした社会人で、大人だし、すごく安心する人だし、一緒にいて楽しいよ」  そうか、と言った達樹はそれでも心配そうな顔だった。でも祐樹は達樹が受け入れてくれたことに心からほっとしていた。 「ほかのみんなには言わないで」 「言うか、ばか。お前のプライベートだろ」  そのぶっきらぼうなやさしさに、祐樹はいまでも感謝している。 「お客様、なにかお探しですか?」  ディスプレイのまえでじっと足を止めている祐樹に、年かさの男性店員が控えめな笑顔で声を掛けてきた。  はっと意識を戻す。  そうだ、東雲への贈り物を探していたんだ。 「ああ、はい。知人が仕事で大きな賞を受賞したので、お祝いになにか贈ろうと思ったんですけど、いいものが思いつかなくて」 「それは素敵ですね。どんな方ですか?」 「30代のおしゃれな男性です」 「30代ですか。スーツはお召しになります?」 「仕事柄、普段はラフな感じです。スーツのときはフォーマルな場が多いのかも」 「そうですか…。お祝いでしたら、こちらの財布や名刺入れといった革製品ですとか、名入りのボールペン、万年筆、あとはやはりネクタイやカフスというところでしょうか。失礼ですが、ご予算があればほかのご提案もできますが…」  やわらかな物腰の店員は白手袋をつけた手で、いくつかの品々をカウンターに出して見せてくれ、並べられた商品をまえに祐樹はしばし考え込む。

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