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第8話
祐樹の目を引いたのは、ネクタイピンとカフスのセットだった。
花の形のカフスだが、先のとがった5枚の花弁部分にパールが埋め込まれ、周囲には繊細なラインのクリアストーンがあしらってあり、上品な光沢と派手さがあって、東雲にはとても似合う気がした。
若干、好みに左右されるかもしれないが、カフスくらい何組かあって困るものでもないだろうし、フラワーモチーフのカフスなどそう多くはないだろうから眺めて楽しむのでもいいだろう。
石付きのタイピンとカフスはすこし気障な感じもするけれど、東雲のやわらかな雰囲気ならきっとそうはならない。
「こちらのセットがお気に召されましたか?」
「そうですね。華やかな雰囲気の人なので、いいかもしれないと思って。でもパールは持っているかもしれないな」
「同じシリーズで石違いもございますよ。ご覧になりますか?」
そう言って出してきたのはパール部分がラピスラズリの青い花と、パールを染めた明るくきれいなピンクの花だった。デザインは同じで周辺のクリアストーンがやはり上品さを引き立てている。
どちらもなかなか綺麗で、祐樹は迷った。
じぶんがつけるなら青だと思うが、東雲にはピンクもいいだろうか。…いや、やはり白がいい。お祝いなのだし、最初に目を引いた直感が白がいいと告げていた。
「やっぱり最初の白にします。ラッピングして届けていただけますか?」
「はいかしこまりました。メッセージカードはお付けになりますか?」
「…そうですね。お願いします」
すこし迷ったが直筆のメッセージを書いて、そういえば東雲のいまの住所を知らないと思いつく。
お金を払ってしばらく待ってもらい、店内の本屋に行ってさっき美容室で見た雑誌を探す。ラックにかかっていた一冊を手に取って開いた。
インタビュー記事の一角に、Office Koseiと会社の住所が載っていたので、そこに発送してもらうように頼んだ。
東雲がいつ受け取るかわからないが、急ぐものではないから構わない。
すべての手配を終えると、なんとなくひと仕事やりとげたような、ふしぎな達成感があった。
彼に未練は残していないつもりだったが、やはりどこか気にかかったままだったんだろう。
さて買い物にいって、部屋に帰って荷物を詰めてしまわなくては。きょうはやることがたくさんあるのだ。
祐樹は急ぎ足でデパートを出た。
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