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ザーッと中の液体が足元の排水溝に吸い込まれてガラスが開く。それは、一度しゃがんで慎重に水槽から降りた。
水を含んでいるせいでペタペタと音が鳴り、俺の目の前まで近寄ると、ぎゅっと手を握られた。
人間と同じように柔らかくて、冷たい手だった。
「ちょっとーーー!ねえ!開けたの!?」
向こうから大声が聞こえる。
あ、これはまずかったやつか。
ヨリヒトは走ってここまでやってくると、ああぁ…。と両手で頭を抱えた。
「アキラ…、やったな……。」
「悪い。ボタンを押してくれと頼まれたからな。ほら、ヨリヒトが怒ってるからお前も水槽に戻れ。」
手を離してそいつの肩を押すと、首を横に振る。
「無理だよ…。永久保存させてたんだ……。目覚めちまったじゃないかあ!」
ああ〜くそ〜。と、項垂れる姿を見て、すまなかった。と謝るが「謝って済む問題じゃないよ…。」と情けない声で返ってくる。
そんなにとりかえしのつかない事をしてしまったのか。といよいよ俺の心も焦り出す。
「と、とにかく説明してくれ!本当に悪かった。責任はちゃんと取るから!」
ヨリヒトの肩を揺すると「本当に責任取るんだね?」と鋭い目つきで問いかけられる。「もちろん、人の物を勝手にいじってしまったからには、弁償でもなんでもする。」と伝えると、研究室のさらに奥の部屋へ案内された。
「さっきアキラが開けた水槽の中身なんだけど。」
先程の研究室とはうって変わり、茶色を基調としたカフェの様な落ち着いた空間だった。
俺とヨリヒトはテーブルを挟んで向かい合って座り、あいつは俺の斜め後ろで立っている。
天井がやけに高いが、このビルどんな作りになってるんだ。
きょろきょろと辺りを見渡していると、ヨリヒトが口を開いた。
「あれ、人間なんだ。」
「…はあ?!」
人間?!どういうことだ!?
テーブルから乗り出してそう聞き返すと、ヨリヒコは大きくため息をついた。
「まあ正確には"元"人間かな。永久保存するために少しいじったんだ。」
「なんで、そんなこと….。」
こいつがまさか、人間にまで手を出していることに驚きを隠せず、思わず掌で口元を覆う。
後ろにいる元人間に目をやると、真っ直ぐ前を見つめたままピクリとも動かない。
「理由を聞かせてやる代わりに、一つお願いがある。」
真剣な眼差しで俺を見つめる。
ごくり、と喉を鳴らして次の言葉を待った。
「こいつを引き取ってくれないか。」
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