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「引き取る!?それは……無理だ。」 「えー、だって何でもするって言ったじゃん。」 「いや、修繕費とか、元に戻すの手伝うとかだと思ってたからさ…。」 「お金なんていいよ〜。別にそいつ壊れてないし。 まあ完成させたまま保管してたって感じ?頃合いが来たら出そうとは思ってたんだけどねえ。」 ヨリヒトは他の何ら変わらない表情で話しているが、俺には分かる。とてつもなく不機嫌だ。 完全に目が据わっている。 こうなったらヨリヒコは人の意見を聞きやしないんだ。 「……だって引き取るって、これからこいつと生活するってことだろ?」 「そうだね。」 「俺、平日は仕事だから家空けるし、その間こいつ1人じゃ無理なんじゃないか?」 「ああ、それは問題ないよ。見たまんま、彼は高校生と同等の知識と知性を持ってる。」 何だよ。ただのロボットじゃないのかよ。 ちらりと彼の方を見ると、ぱち、と瞬きをする。首元の皮膚からは血管が透けて見える。見た目だけ見れば、まさに人間だ。 とは言っても、そんな急には無理だろ。 俺は明日も仕事があるし、正直自分の生活で手一杯な状態だ。「少し時間をくれないか?」とヨリヒトに尋ねると、しばしの沈黙の後、「……アキラ。」と言い鋭い眼差しで目を合わせてきた。 「往生際が悪いぞ?」 ぴり、と空気が変わるのを感じた。 表情も口調も変わらないのに、完全にヨリヒトのペースに飲み込まれる感覚。 高校の時から変わらない。 頭のネジが飛んでるように見えて、実はキレ者だからなあ。久しぶりに感じる圧に思わずたじろいだが、10年来の友人となると相手の考えてる事は分かってくるもんだ。 ヨリヒトは「さあ、どうする?」と前のめりで詰めてくる。どうする。ったって、イエス以外の答えは受け入れないだろ。 「……分かったよ。」 はあ、と大きくため息を吐いて項垂れる。 元はと言えば勝手に人の家のもんを触った俺が悪い。 するとヨリヒトは勢いよく立ち上がってパンっ、と手を叩いた。 「よーし!じゃあ早速アキラの家にお引越ししようか! さっきも言ったけど、言語も運動能力も問題ないから。 ルームメイトが増えたって感覚でいてくれればいいからさ!」 ヨリヒトは、るんるん、と扉の方向に歩き出す。 「あ、ああ。あとさ、ずっと気になってたんだけど。」 「ん?なに?」 「そろそろ服、着せてやってくれない?」

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