7 / 51

.

「過去の記憶、ですか。」 口元に持ってきた箸を止めて、俺の質問を繰り返す。 「そう。さっき牛丼食うの久しぶりって言ったじゃん? だから何か覚えてることあるのかなー。って。」 そう尋ねると、うーん。と首を傾げる。 「過去の記憶、って言いますか、俺、昨日まで普通に、学校、行ってたんですけど。」 「え?」 予想外の答えに素っ頓狂な声が出る。 まてまて、昨日まで学校行ってた。って、どういうことだ? ヨリヒトから聞いてない話が多すぎて頭が追いつかない。 あいつ、重要な部分の説明が全くないじゃないか…! 「あれ、さっきまでヨリヒトの所に居たじゃん?あいつからは永久保存がなんたら〜って言ってだけど…。」 「ヨリヒト…?はさっき帰ってなかった?」 んん!? まって、全く話が噛み合ってない。どういうことだ? キョウヘイもすっかり食べるのを止めて、不思議そうにこちらを見てくるあたり、嘘ではないのだろう。 となると、なんだ? とにかく疑問ばかり出てくる思考を落ち着かせた。 「悪い。俺もヨリヒトから何も聞いてなくて。キョウヘイ君は昨日学校に行ってたの?」 「はい。」 「なるほど…。どこの学校か聞いていい?」 「はい。えっ、と。………あれ、俺、どこの高校、行ってたっけ……。」 何で思い出せないんだ。と落ち着きのない様子を見せる。 彼の様子を見るに、恐らくヨリヒトが何かいじったのだろうか。キョウヘイも困惑した様子で頭を押さえた。 「俺、なんで、ここにいるんだっけ?どうして、なにも、思い出せないんだろう。」 手を額に当てながら目を見開くキョウヘイからは、汗が滲み出ている。 流石にこれ以上はまずいか。 「ごめん。色々聞きすぎたね。今日はもう休もう。」 キョウヘイの背中をさすって落ち着かせる。 とりあえず明日、ヨリヒトに聞きたい事が山程ある。あいつ何も知らせずに引き取らせやがって。 すぐにメッセージを送りつけ、キョウヘイを寝室に送った。 「アキラさん、明日も仕事、なんでしょ?俺、ソファでいいよ。」 先程ヨリヒトに言った事を聞いていたのか、気を遣ってソファを指さす。 「ああ、いいよ。遠慮しないで。今日はゆっくりしな。疲れただろう。」 「でも。」と言うキョウヘイに、「気にしないで。」と告げると大人しくベットの中に入っていった。 「電気はここだから。もう消してもいい?」 頷く彼に「おやすみ。」と言って電気を消した。

ともだちにシェアしよう!