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. 諮問
「じゃあ行ってくるから。何かあったら、この番号に電話して。20時には帰るよ。」
「わか、った。」
手を振って見送ってくれるキョウヘイに、「いってきます。」と言って仕事へ向かった。正直不安な気持ちが大きいが、高校生だもんな。大丈夫だよな。と言い聞かせて足を早めた。
「おい!ヨリヒト!いるんだろ!開けろ!!」
仕事が終わり、真っ先にあの薄暗いビルに向かった。
あの野郎。あれから一言も連絡よこさないなんて。
ダンダンダン!と鉄製の扉を思い切り叩く。
近所迷惑もいいところだろうなと思ったが、そんなのお構いなしだ。
電話しながら扉を叩き続けるが、向こう側からは何も反応は返ってこない。
くそ。留守か…。
メッセージの既読はついてるのに、あいつ。
チッ、と舌打ちをして、その場にしゃがみ込む。
仕方ない。ここで待つか。
今にも切れそうな蛍光灯の電気を眺めていると、カツ、カツ、と階段を上がるような足音が聞こえてきた。
ヨリヒトか?
人影が見えたので俺も立ち上がると、現れたのは黒いスーツを着た長身の男だった。
俺より広い肩幅、身体に合ったスーツのジャケットから覗くシャツには、鮮やかな緑色の石がついたカフスが身につけられている。
ネクタイにはピンが留められており、胸ポケットからは三角に折られたハンカチーフが覗く。
何で金持ちがこんなビルに。
服装と場所が似つかわなさすぎる男をまじまじと見つめていると、軽く会釈をされる。
俺もつられて頭を下げると彼は「失礼。」と言ってドアの前に立った。
キーパッドを指先で軽く叩き扉を開けると「ヨリヒト、入りますよ。」と言って部屋に入っていった。
「貴方もここに何か御用が?宜しければ内容を伺いましょうか。」
彼は部屋に入る途中、俺に問いかける。
「昨日連絡したアキラだ。って伝えてもらえますか。」
「アキラ……、ああ。アキラさんですね。承知いたしました。どうぞお入りください。」
彼は少し考えた後、俺を中へと迎え入れる。
俺、こんな奴と知り合いになった覚えはないんだけど…。と思いながら、彼に言われるまま足を踏み入れた。
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