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. ヨリヒトの胸臆 -追憶-

「キョウヘイを待たせてる。」そう言い残して、アキラは家を飛び出して行った。 2階からアーケード側の窓を覗くと、走って大通りへ向かう彼が見えた。 はあー、と大きなため息を吐いてソファに倒れ込む。 「夢も持たずに惰性で生きてる奴ら。」がどれだけ羨ましいか。夢なんか叶えてしまったらそれまでだし、持つだけ無駄なんだよなあ。 すん、と普段感じない香りがして顔をあげる。 ここ、アキラが座ってた場所かあ。 高校時代から何にも変わってなかったな。 あーでも、見た目も中身も前より丸くなったかあ。と考えては、ぷぷ、と一人で笑った。 自分のことみたいに、俺の心配しちゃってさ。 ほんと馬鹿正直なんだから。 「あー。だめだ。おじさんのメンブレは厄介だなあ〜。」 背もたれに両手をかけて、天井を仰ぐ。 「戻りたいなあ〜。高校生に〜〜。」 そのまま目を閉じて眠りにつこうとしたその時、ポケットのスマホが震える。画面には"カガリ"の文字。 最悪。このタイミングでこいつかよ。 「…なにぃ?」 『そろそろ終わった頃かと思いまして。』 「そうねー、タイミングはバッチリ。」 『俺の前では明らかに態度違いません?アキラさんの時はあんなに可愛いらしいんですね。』 「はあ?なに、盗聴器仕掛けたわけ?まじで悪趣味なんだけど。」 『自称研究員でもあろう方が、こんな隙だらけじゃ機密情報の漏洩も懸念されますねえ。』 「うぜー。どうせ近くにいるんだろ。早く来いよ。」 『メンブレしてらっしゃいますもんね。後で慰めてあげます。』 「そーいうのいらないから。」 強引に電話を切ると、カガリのトークルームから泣いてるキャラクターのスタンプが送られてくる。 何がぴえんだ。微塵も思ってないくせに。 重い腰を持ち上げて、コンセントの前にしゃがみこむ。 だからさっき、スマホの充電させろって言ってたのか。 カガリの持ってきた充電用のコードとブロックをコンセントから外して、窓の外へ投げた。

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