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ギリギリスーパーの閉店時間までに間に合った俺は、目に入った食材を片っ端からカゴに詰めてきた。
普段材料を買わないせいで、とんだ大荷物だ。両手に大きな袋を下げて早足で帰宅すると、21時を回っていた。
「すまん、遅くなった!」
バタン!と大きな音を立てて玄関を開ける。
靴を脱ぎ捨てて部屋に入ると、何やら良い匂いがした。
キョウヘイ、先に何か食べたかな。そう思いながらリビングを覗くとキョウヘイは台所に立っていた。
「あ、おかえりなさい。」
持っているおたまを掲げて、ひらひらと振ってくる。
今、なんか飛んだな。と思いつつ、両手の荷物を床に下ろした。
「あーー重かった……。飯、もう食った?」
「まだだよ。今丁度できるから。」
鍋にかかっている味噌汁をお椀に掬って、レトルトのご飯をレンジにかける。テーブルには既におかずが何品か並べられていた。
え。これ全部キョウヘイが作ったの?
ぽけ、と手際よく準備する様子を見ていると「どうしたの?早く食べよう。」と椅子に座る。
「これ、全部作ったのか?」
「そうだよ。美味しそうでしょ〜。」
湯気と一緒に食欲をそそる香りが飛んできて、思わず喉を鳴らす。キョウヘイに言われるまま、席について手を合わせた。
「いただきます。」
「どうぞー。」
味噌汁に口をつけると、じわ〜と身体に染み渡るのを感じた。一日頑張った身体にこの味は反則だろ…。
夕飯が遅かったのもあるが、今日は特に疲れた。
かき込むように食べていくと、いくつもあった皿の中身があっという間になくなっていった。
「そんなに食べてもらえて嬉しいなあ。」
「本当に美味しいよ。ありがとうな。」
キョウヘイは、よっしゃ!と年相応の反応を見せる。
まだ食べている彼を見ていると、目の端に買ってきた袋がそのままになっていることに気がついた。
しまった。冷蔵庫入れないと。
「ごちそうさま。」と言って片付けはじめた袋の中身を見て、そういえばキョウヘイ、材料はどこで買ってきたんだ?と疑問に思う。
「キョウヘイ君、そういえば材料ってどこで買ったの?」
するとキョウヘイは「ああ!それね。」と言って箸を上に上げる。
「近くのスーパーで買ったよ。昨日ヨリヒトの家出てく時にお金持たせてくれたの思い出してさ、丁度いいや、って思って昼間行ってきた。」
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