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「アキラさーん。上がったよー。」 タオルを首に巻いたキョウヘイがリビングへ戻ってくる。 あつー。と言いながら冷蔵庫のお茶を取り出した。 「あれ?何作ってるの?」 「明日の朝飯だよ。時間ないから今のうちに作っとこうと思って。」 キョウヘイは「ふーん。」と言って横から覗き込むと、俺の手元を見て声を荒げた。 「え、めっちゃ手ぇ震えてるじゃん!違うよ。豆腐はこう切るんだよ!」 「貸して。」と包丁とまな板に置かれた豆腐を取ると、まな板を傾けて豆腐一丁を丸ごと掌に乗せた。 「え、お前何しようとしてる?」 「何って、豆腐を切るんでしょ?」 そしてそのまま豆腐を掌で切り始めた。 え、え?手ぇ大丈夫なの? 俺が口元を手で隠してその様子を見ていると「アキラさんまさか、切り方しらないの?」と聞いてきた。 「豆腐はね、掌で切ったほうが型崩れしないんだよ。」 じゃーん!と切った豆腐と掌を見せてくる。 ほんとだ。手、切れてない。 「すごいな。」と溢すと「アキラさんは料理しなさすぎ。」と笑われる。 「で、何作ろうとしてたの?」 「サラダ。」 「サラダ!?」 驚いたキョウヘイは、あはははっと大きな声を出して笑う。「そんなに必死な顔で、サラダ…。」と小声で言うが、全部聞こえてるぞ。 「馬鹿にしてるだろ。」 「いやいやぁ、してな、ふふっ。してないよ。」 完全に笑い堪えているキョウヘイは、お腹を押さえて「無理…。」と溢す。 「それならご飯は俺が作るよ。アキラさん家に住ませてもらってるんだし。」 「俺の作る飯は心配だってことか…?」 そう言うと数回瞬きをして、「違うよ!」と笑い出す。 「何でもかんでもしてもらうのは悪いし!あと俺料理得意だし!」 「まあさっきの切り方はウケたけど。」と付け足してくる。正直、ちょっと情けない気持ちになるがここはキョウヘイに任せた方が良さそうだと思い、お願いすることにした。すると二の腕をぽんぽんと叩いて「任せて!」と頼もしい声をあげた。

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