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episode2. 往古来今

「言っただろ。休日だから誰もいないって。」 「だからいいんだよ!ほらもうちょっと早く歩いてよー」 キョウヘイのリクエストで、何故か俺の母校へ行くことになった。電車を乗り継いで約30分。だんだんと見慣れた景色に変わっていく様子を車窓から見ていた。 駅に到着すると、懐かしい匂いを感じるのは気のせいだろうか。 帰ってくるのなんていつぶりだろう。 大学へ進学するタイミングで、今のところへ引っ越したから10年くらいか。 辺りを見渡しても以前と変わらない街並みが、なんだか落ち着いた気持ちにさせてくれた。 しばらく歩いた先に高校がある。 キョウヘイはフェンスを掴んで「誰もいないね。」と呟いた。そうして、冒頭の会話に戻る__。 「ねえねえ、ちょっと入ってみない?」 「はあ!?ダメだろ。」 「大丈夫だって!ほら!」 キョウヘイは「よいしょ」と言って校門をよじ登って飛び越える。 いやいや、お前は在学生で誤魔化せても俺は完全に不審者だろ…。呆れた目で向かいに立っているキョウヘイを見ると「はやく〜。」と言って門の隙間から手を振ってくる。 「…〜っ、ちょっとだけだからな!」 ええいもうどうにでもなれ!と投げやりになりながら、俺も校門を飛び越えた。どうか誰もいませんように…。 ひやひやしながら歩いていると、校庭の一番奥に生えている大きな桜の木を見つけた。確か、卒業式の時あそこでヨリヒトと写真を撮ったっけ。 桜の木の隣にあるボロボロの部室棟も、錆びついたサッカーゴールも、砂だらけの下駄箱も、何も変わっていない。 10年の月日を感じさせない場所に、思わず胸が高鳴った。 「やっぱどこの扉も閉まってるな〜。」 「当たり前だろ。門閉まってたんだから。」 「あ、俺こーいう時どこが開いてるか知ってるよ。こっちきて!」 キョウヘイは校舎の裏側に回り込んで、職員用駐車場の方へ向かう。すると丁度駐車場の真ん中辺りに、勝手口の扉が現れた。キョウヘイはそれを見つけると「あったあった。」と言って走っていく。 「大体どこの学校もここは開いてるんだー。」 何故か得意げな表情で扉を指さした。 「いやいや、流石に校舎に入るのはまずいって。 ……って、おい!」 キョウヘイは「あ、本当に開いた。」と言って扉の中に入って行く。「開いた。じゃないよ!」と声をあげると、中から手招きをしてくる。 「ここまできたらどこにいても一緒だよ!ほら、近所の人にバレないうちに!」 そう言われて、ちらりと後方の道路を確認すると右側からこっちに向かって歩いてくる人が見えたので、俺は隠れるように校舎の中へ入っていった。

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