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「ヨリヒト、やりやがったな!」
「え〜何のこと〜〜?」
立ち上がろうとするアキラを横から宥めていると、ポケットに入れていたスマホが震えた。俺は取り出して画面を確認すると、知らない番号が表示される。
誰だろう?
普段なら登録していない番号は出ないのだが、この日はたまたまその電話をとったのだ。
「ごめん。俺電話出てくるね。」
止まらない二人の言い合いをそのままにして、俺は席を立った。騒がしいフードコートを抜けて、比較的人の少ないトイレの前で立ち止まり電話をとった。
「はい。伊野です。」
「◯◯総合病院です。伊野キョウヘイさんのお電話でお間違いないですか?」
「はい…、そうですけど。」
聞き覚えのない病院名を聞いて眉を寄せた。
俺何か変なサイト開いたっけな。なんて頭の片隅で考えていると、「落ち着いて聞いてくださいね。」と前置きした相手は、低く落ち着いた声色で話しはじめた。
俺は疑いながら流すように聞いていると、信じがたい言葉を言い渡される。
ご両親が事故に遭って____。
未だ意識は…………
万が一を想定して………至急____。
スマホを持つ手が、重力に任せて下に落ちる。
頭が真っ白になって俺はその場で立ちすくんだ。
耳を疑った。
父さんと母さんが、事故?
突然伝えられた内容に、混乱して膝を曲げる。
まだ繋がっている電話の向こう側からは「聞こえてますか?」などの声が聞こえるが、返事をするという選択が頭の中から消え去っていた。
えっと、どうしたら……。今から病院に……。
震える指先で病院名を検索すると、ここから電車で2時間ほどかかる場所だった。
たしか今日父さんたちはドライブに行くって言ってて、その先で事故に……?
電話のかかってきた病院は何県だっけ。と、未だかつて体験したことない程のスピードで脳が動きはじめる。
酷い頭痛を感じてしゃがみこむと、「キョウヘイまだそんなとこにいたの?」とジュースを両手に持っているヨリヒトが近寄ってきた。
「どしたの?顔色悪いけど。」
何から伝えていいのか分からなくて、口をぱくぱくと動かすことしかできなかった。未だ震えが止まらない指先が、持っていたスマホを床に落としてしまった。
「あ、えっ、と…。と、さんと、母さ、が……。」
震えが全身に広がり、唇も肩も徐々に大きく動き出す。
ヨリヒトは持っていたジュースを置いて、「大丈夫。落ち着いて。」と俺の肩を抱き寄せた。
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