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. 審問
昼休憩になると、キョウヘイは担任に呼ばれて教室を出て行った。今日の昼飯はヨリヒトと二人か。
キョウヘイがいないと、こいつは加減というものを知らない。俺はこいつが何を仕掛けてるか、身構えながら弁当箱を取り出した。
「ねえアキラってさ、キョウヘイのこと好きでしょ。」
「はあ!?」
持っていた弁当箱を思わず床に落としてしまった。
早速とんでもない爆弾を放り投げて来たヨリヒトを見ると、「やっぱりそうだ!」と両足をばたつかせる。
俺は動揺のあまり机と椅子を揺らすと、ヨリヒトは箸の先を俺に向けビシ、と決めると楽しそうに口を開いた。
「そうでしょ?ねえ、そうでしょ?」
目を輝かせて聞いてくるヨリヒトは、いつになくテンションが上がっていた。
「……キョウヘイは友達だよ。」
そう答えると「あ、今嘘ついたー。」と机から身を乗り出して俺を問い詰める。
「あのね、三年も近くにいると分かるんだよ。大学もキョウヘイと同じ所にする為に先生の推薦断ってるんでしょ?もう早く告っちゃいなよ〜〜。」
両肘を突き頬を乗せて話す姿は、最早女子高生の恋バナだ。俺は返す言葉もない状態で、赤くなっているであろう耳を隠すことしかできなかった。
ヨリヒトだけには、絶対バレたくなかったのに……。
「キョウヘイ頑張ってたもんね〜。ここ半年で学力追い上げて、一番最初にアキラが目をつけてた大学に行こうとしてるんだもんね。これってさ、実はキョウヘイもアキラの事好きだったりして…。」
るんるん、といった効果音が似合うヨリヒトは「応援したいな〜。二人の恋路、応援したいな〜。」と即興の歌を歌い始める。完全にこの状況を楽しんでいるヨリヒトは、いつになく瞳を輝かせていた。
「……お前、キョウヘイには言ってないよな?」
そう尋ねると、ヨリヒトはぐっと口角を上げた。
「まさか!言うわけないよ!俺は二人のことが大好きだからね!」
胡散臭すぎる。俺はヨリヒトの目をじっと見ると「やだ!実は俺のことも…?」と握り拳を口元に持ってきて何故か恥ずかしがる仕草を見せた。
「キツイわ。」と返すと唇を尖らせた。
「本当に?言ってないんだな?」
「本当本当!なんならキョウヘイに直接聞いてみるといいよ!」
「それじゃバレるだろ…。」
「へへへ、なあんだアキラも結構可愛いとこあるじゃん〜。」
「うるさい。」
俺の頭を撫でようとしてきた手を払い、弁当に箸をつけた。
「この話は終わり。」と手を叩くが、ヨリヒトはまだ満足がいっていないようで。いいおもちゃを見つけたとばかりに、俺の話を根掘り葉掘り聞いてくる。
「ねえ、いつから好きなの〜?」
「ああーうるせえ!飯食うぞ、飯!!」
かかかっ、とご飯をかき込むと「照れ隠ししちゃって〜。」と余計に恥ずかしさを煽られる。
これだから、ヨリヒトと二人で飯を食いたくなかったんだ。初手から調子を狂わされた俺は「あ〜〜。」と情けない声をあげながら、ヨリヒトから目を背けた。
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