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しばらくの沈黙の後、叔父が口を開いた。 「認めない。」 期待外れの返答に俺は困惑した。 なんで?どうして?疑問詞しか出てこない頭を必死に働かせるが、突きつけられた言葉すら受け入れられない頭は、それ以外の働きを示さなかった。 それでも、理由を聞かないと納得できない。そう感じた俺は弱々しく叔父に尋ねた。 「どう……、して?…理由が聞きたい。」 「どうしてって、それはうちの子のプレッシャーになるからに決まってるだろ。兄の子は優秀で、うちのマサトが落ちこぼれなんて可哀想だろう? だから就職しろと言ってるんだ。俺は無駄な金を払う必要も無くなるし、お前は他の奴らが大学に通っている四年間多く金を稼げんるだぞ。お互いにとって悪い話じゃないじゃないか。」 叔父から放たれた言葉に絶句した。 開いた口が塞がらずに呆然とテーブルを見つめることしか出来なかった。 黙る俺の様子を見ている叔父は、次第に貧乏ゆすりを大きくしていく。ついに痺れを切らしたのか、ばんっ、と強くテーブルを叩いた。 「この話はこれで終わりだ!二度と進学したいなんて口にするんじゃない!」 そう言って、プリントを破り捨てた。 はらはらと舞う紙切れを目の端で追う。 ああ、俺の一年が。 努力が目の前で破り捨てられる。 いとも容易く散っていく姿は呆気なかった。 「分かったらさっさと帰れ。ったくなんて物分かりの悪い奴だ。……兄貴と一緒に死ねばよかったのに。」 叔父の一言は、俺にとどめを刺すには十分は言葉だった。

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