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「ごめん、でも俺、アキラと同じ大学に行けないんだ。」 抱きしめていた腕をほどいて、アキラの手の甲に手のひらを重ねた。 「え……、どうして……?」 鼻を赤くしたアキラは、俺から目を離さずに問いかけた。 再び不安な表情を見せる彼に、俺は全部話すことにした。 夏に起こった両親の事故。 叔父の許しをもらえず進学できない事。 アキラに心配をかけたくなくて、今まで一切相談をしなかった事。 話の途中で何か言いたげに口を開いたが、最後まで話を聞いてくれた。一通り話し終えた後、アキラは「そうか。」と一言だけこぼした。 「……正直、全部話してほしかったって思った。」 「……ごめん。」 「でも今、全部話してくれてありがとう。これからは、キョウヘイの力になりたい。」 アキラは重ねていた俺の手をとって両手で包み込む。 温かい指先は、今まで抱えてきたものを優しく溶かしてく様だった。 目の前の出来事に視界を奪われて、一番大切にしていた気持ちを忘れていた。 アキラが好きだ。それだけでいいじゃないか。 進学出来なくても、気持ちの繋がりがあるだけで頑張れる。そう思った。 「進学も就職もしないつもりで悩んでたけど、今決心が着いた。」 「うん。」 「就職する。俺、頑張るよ。」 絡めた手を握りしめると、アキラは片方の手でもう一度抱きしめて「キョウヘイならできる。絶対大丈夫。」そう言ってくれた。俺は再び流れる涙を抑えきれずに、アキラの胸の中で静かに泣いた。

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