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「キョウヘイがいなくなった!?ちょっと先生、どういう事ですか……!」 「ホームルームが終わった頃合いをみて、担任の先生に伊野くんどうしたらいいか話に行ったのよ。それで15分くらい保健室開けてたらその間に、ねぇ。」 「そんなに焦る事なのか?ヨリヒト。」 今朝のキョウヘイの様子を見ていないとはいえ、呑気な反応をするアキラに苛立ちを覚えた。 焦るも何も、あの状態じゃ何するか分からないじゃないか。さっき保健室でキョウヘイが言った言葉、聞き間違いじゃなかったら最悪の事だって考えられる。 「それに伊野くん、大分疲れてる様子だったから動く気力も無いと思って……。ごめんなさいね。」 「……分かりました。もしキョウヘイが戻ってきたら、教えてください。」 俺はすぐにキョウヘイに電話をかけた。 頼む、出てくれ。 しかし何度もコールしても出ず、留守番電話に繋がれる。 チッ、と舌打ちすると隣で立ち尽くしていたアキラが「なあ」と話しかけた。 「なんでそんなに焦ってんだよ。ただの体調不良じゃないのか?」 困った様子でアキラが尋ねた。 「………今朝キョウヘイと会った時、傷だらけだったんだ。」 「傷?」 「顔はガーゼと絆創膏だらけで、制服もぼろぼろでさ。」 「………。」 「そうだ、アキラ昨日キョウヘイと一緒に帰っただろ。帰り道にどこか行くとか言ってなかった?」 「帰り道?あー、就職に決めたって言って叔父さんの家に行くとか言ってたような…。」 やっぱり叔父さんか。 俺は大きなため息をついてその場にしゃがみ込むと、上から怒気の篭った声が降ってくる。 「どういう事だよ。お前とキョウヘイだけで話を終わらせるな。説明してくれよ……。」 アキラは唇を噛み締めて俺を見つめる。 説明するとなると、今までアキラに隠してたキョウヘイの本心にも触れる事になる。だが、恐らくこれは話しても問題ないだろう。今最も気をつけなければいけないのは、キョウヘイの相談相手が俺で、異変に気づいたのも俺だと言う事。 夏に両親が亡くなった時、たまたま俺が居合わせた。 それを機に様々な相談を聞いてきたが、内容も、相談自体受けていた事も、俺もキョウヘイもアキラには話していない。 しかしアキラとキョウヘイ、両方の気持ちに気づいていたからこそ、この事実を知られるのだけは避けたかった。 二人がくっついてしまえば、そう悩む事でもないと踏んでいたが、そうじゃない今、アキラからしてみれば面白くないだろう。 多分アキラの性格だと俺への嫉妬心とキョウヘイに不信感を抱く。 それでさらにキョウヘイにストレスを与えるのだけは避けたい。 しかしアキラに状況を伝えない限り話が進まないのも事実。俺は言葉を選びながら、アキラに説明をした。

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