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11 重なる
初めて楓真は浩成とベッドに入った──
自然とキスをして、愛おしさに胸が熱くなった。記憶が蘇ったわけじゃない。浩成を知り、今まで共に過ごして来たことで恋する気持ちが蘇ったのだと思う。ここまできても思い出してやれないことがもどかしく、やっぱり申し訳なさが顔を出す。それでも湧き上がってくる多幸感に楓真はやっと一歩を踏み出せたのだと実感した。
ドキドキと高鳴る気持ちを抑えながら、楓真は自分の腕の中にいる浩成の額にキスを落とし「おやすみ」と囁いた。
「あっ……」
不意に浩成の手が楓真の股間に触れる。遠慮がちにゆっくりとその手に弄られ、一気に体が熱くなった。
「ごめん、このまま寝るなんて俺、できないから……楓真は何もしなくていいから……」
浩成の悲愴な面持ちを見て、先ほどまでの幸せな気持ちに自信がなくなる。ここまできてもなお浩成は遠慮しているのか、何度も「ごめん」と謝りながら楓真を押さえつけ跨った。
「止められない……ごめんな。嫌だったら押しのけていいから……殴ってもいい……俺から逃げて」
触れられて、押さえつけられても嫌悪感なんて微塵も感じていない。楓真に跨り辛そうな表情で服を脱ぎ去っていく浩成を、下からじっと見つめる。そんな顔をしなくてもいい、謝らなくてもいい、そんな顔は見たくない。それを伝えたくて楓真は笑顔を見せ両腕を広げた。
「逃げるわけないだろ。大丈夫。俺、嬉しいんだ。嫌じゃないよ」
ハッとした顔をし涙を浮かべ、覆い被さってくる浩成を受け止める。楓真から「キスして」と囁くと、浩成はクシャッと笑い顔を寄せた。
浩成の舌が恐る恐る楓真の閉じた唇に触れる。自然にそれに応えるように楓真はその舌先を受け入れ、お互いを確かめ合うように何度も何度も舌を舐り唇を重ねた。
「浩成君……俺、初めてだから、ちゃんとできるかわからない」
いや、実際は何度もこうやって愛を育んできたのだろう。キスだって当たり前に何度もしてきたはず……でもその時の記憶がない楓真にとっては初めての経験と同じことだった。緊張と不安とで思わずそんなことを口走ってしまい、しまった、と思い顔を見ると、「何も心配ないよ」と浩成は優しく言って楓真の服を脱がせ始めた。
「ちゃんと勃ってるね。嬉しいな……」
露わになった体を繁々と眺められ、羞恥心が湧き上がる。「キスだけで、恥ずかしい」と楓真が消え入りそうな声で訴えると、浩成は頬を赤くして小さく笑った。
「大丈夫だよ。それにほら、俺も」
浩成に手をとられ、引き寄せられ触れたそこも、楓真と同じに固く反り勃っているのがわかる。肌を触れ合い、抱きしめられ唇を重ねる。それだけで幸せな気持ちになり感情が昂るのがわかる。自分と同じように息を荒くし、興奮している浩成を見て、楓真はどんどん淫らな気分になった。
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