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12 貪る

 自分の上に跨り、顔を上気させ「あんまり見ないで欲しい」と恥じらう浩成から目が離せない。楓真にとって何もかも初めての感覚で少し戸惑いつつも、その悩ましい姿態に興奮しないわけがなかった。 「もうちょっと待って……」 「ねえ浩成君、それ……解すの俺がやっちゃだめ? 自分じゃやりにくいんじゃないの?」  楓真は行為の記憶がなく初めてだと感じるとはいえ、ちゃんと知識としてはわかっている。浩成が自ら後ろ手に後孔を解しているのは、楓真のそれを受け入れるためだ。時折艶かしい息を吐きながら楓真を見つめる浩成に早く触れたくて体を起こすも、「待って」と言われ押し戻される。 「流石に恥ずかしいから、自分でやるから……楓真は何もしなくていいよ」  微かに漏れ聞こえるクチュ、という卑猥な音に、ただ裸で横になり、何をされているわけでもない楓真は興奮がおさまらない。浩成の眼前に恥ずかしく勃ち上がり震えている自身の先端からは先走りが滲んでいるのがわかる。今、楓真のために浩成が解しているそこを貫くのだと期待が膨らんでしょうがなかった。早くそこに触れ感じたいと気が逸り、何度も浩成の名を呼んだ。  浩成と目が合う。体勢を変えた浩成が「楓真、可愛い……」と呟くと、おもむろに楓真の勃ち上がったそこを咥え、舌で舐った。 「えっ? あっ、あ……嘘、浩成君……」  驚きで楓真は体を強張らせ、浩成にされるがままじわりと襲ってくる快感に身を委ねることしかできない。いやらしく楓真に目線を送りながら、わざとらしくゆっくりと舌を這わせる。纏わり付くような直接的な刺激と、浩成に自身を咥えられ舐られているという視覚的な刺激に、楓真は今にも果ててしまいそうだった。 「ちょっ、あっ……浩成君、待って……それ……」 「ん? 気持ちい? イッちゃいそう?」 「うん、いきそう……気持ちいい」 「いいよ……出して……」  初めて経験する「キス」だけでも気持ちがいっぱいいっぱいなのに、口淫までされるとは思いもよらず、それでも終始浩成のペースで今にも欲を吐き出してしまいそうになっていることに、少しだけ悔しさが湧き上がった。 「やだ、浩成君の中でいきたい。早く抱かせてよ」  強引に腰をひき、バランスを崩した浩成を押し倒す。「ほんとにいいの?」と怖気付く浩成に、「今更かよ」と笑い、その脚を担ぎグイッと腰を入れた。 「もう待てない……挿れるよ? 浩成君、いい?」 「うん……」  楓真は恐る恐る、でも躊躇いなく浩成の後孔に自身をあてがい、一気に奥まで挿入させた。息を詰めたような苦しそうな表情を見せた浩成に気付き、慌てて動きを止め抱きしめながら「大丈夫?」と機嫌を伺う。気が焦って強引過ぎたと恥ずかしくなった。 「大丈夫、奥……すごい……アツいの来た……」  キュッと締め付けられる感覚に、搾り取られるような錯覚に陥る。背中に回った浩成の手に力が入るのがわかった。 「浩成君、いやらしいな。動くよ、いい?」 「いちいち聞かなくていいよ。気持ちよくして……」  挿入されるのも久しぶりだろうし、きっと言わないだけで苦しいのかもしれない。それでも目に涙を浮かべ嬉しそうに楓真にキスをし、恍惚な表情を見せる浩成が愛おしく思える。できるだけ負担をかけないように、ゆっくりと楓真も腰を振り、探り探り快感を貪った。

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