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28 悦びと不安と
「遅えよ」
「ごめん……」
寝室に入ると、既に半裸の千晃がムッとした顔で楓真を睨んだ。慣れているはずなのに、まるで初めての時みたいに緊張した。そう、初めての時も、こうやって躊躇う楓真に千晃は苛立ちながら言葉を放っていたことを思い出す。千晃の言動に冷たく感じ悲しく思うも、こういう人だったのだと改めて思い出すことで、不安は少しずつ消えていった。
促されるままベッドに入り、千晃に身を任せる。言葉や態度とは裏腹に、実際行為の最中触れてくる手指はとても優しかった。
「んっ……ん、ん」
「何だよ、声、我慢すんな」
「や……あっ」
久しぶりなのもあり、緊張と恥ずかしさは隠せない。強引なのにどこか優しいキスに、楓真は体の奥から熱くなるのを感じた。
「俺……が、いなくて……千晃は……あ、あっ……寂しかった?」
緩々と奥に挿入ってくる千晃の指に、思わず漏れてしまう嬌声が恥ずかしい。優しく愛撫されながら、もっと声が聞きたいと楓真は強請るように千晃の頬に触れる。
「決まってるだろ? 寂しかった……もう俺から離れるな。俺の前から消えんじゃねえぞ……」
「うん……千晃、愛してる」
求められることに幸せを感じる。嬉しさに涙が溢れそうになりながら、楓真は千晃に愛を囁いた。
終始千晃のペースで楓真は抱かれる。触れ合う指先、下腹部の内から伝わる熱い滾りに楓真は何故だか少し怖くなった。
「千晃……待って、もっと……ゆっくり、ゆっくり……して……あっ……んっ」
「うるせえな……いいから黙って抱かれてろ……ほら、ここ、いいだろ?」
「あっ……あ……あぁ……んっ!」
千晃の滾りが背後から押入ってくる感覚に、まだ慣れない楓真はどうしても逃げ腰になってしまう。後孔を押し広げられ、容赦ない千晃の激しい抽挿に、軽い痛みと快感が入り混じり何とも言えない感覚に襲われた。「逃げるな」と腰を掴まれ律動は止まらない。終いには掌で口を塞がれ、押さえつけられたまま何度も吐精させられ、千晃も楓真の中で何度も何度も欲を吐き出した。
楓真は長い時間、ただただ情けなく声を上げることしかできなかった。
気がつけば楓真はベッドの中で一人だった。窓を見ると空が白んで日が昇り始めている。
「千晃?……千晃」
ヒリリと痛む尻。言いようのない鈍痛が腰の辺りに纏わりつく。ゆっくりと体を起こすと、情事の痕跡がジワリと滲んだ。
「あ、シーツ……洗濯しないと」
痛む体を強引に起こし、楓真は汚れたシーツを剥ぎ取ると裸のまま洗面所に向かう。リビングの方から苛立った微かな千晃の声が聞こえ、無意識に耳を澄ました。
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