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40 焦燥
「おっ……いいね、久しぶり……でも、ちょっと下手くそになった? もっと奥まで咥えて」
「うるさいな」
「ちょっと? やめていいなんて言ってないよ?」
「うっ……おぇっ」
頭を押さえられ、無理矢理喉奥まで押し込まれる。堪らなくなった楓真はむせながら強引に顔を上げると吏紀を睨んだ。
「乱暴にするならもうやらねえ。こういうの許してるのは千晃だけだ」
「……なんだよ、つまんね」
そもそも吏紀とこうやって二人きりでことに及んだことはあっただろうか。記憶に戻ったのはあくまでも千晃との行為中に吏紀が入ってきていた、ということだけ。千晃が手持ち無沙汰であろう吏紀の相手もしてやれと楓真に言うから、しょうがなしに相手をしていただけだった。決して楓真はこれを愉しんでいたわけではない。だから今、この場で吏紀の言いなりになる筋合いはない。
「そうだよ、千晃がいないのに俺に手を出すな」
「なにそれ、生意気。でもごめんね、もうちょっとしゃぶってよ。楓真君も気持ちよくしてやるからさ」
「…………」
別に自分は欲情しているわけじゃなく、吏紀に求めることなど何もなかった。このまま吏紀に吐精させればそれで満足してくれるだろう、そう思い楓真は黙って口淫を続けた。それになんとなく吏紀の言うことに逆らえない自分もいる。きっと過去にそういった行為を許してしまっていたのが原因なのだ。
「あ、あっ……出そう、楓真君……そこ、もうちょっと……そう、あ……いい、あっ、あ……出る……出るよ、んっ……んっ」
グッと強く髪の毛を掴まれる。喉奥に押し付けるように吏紀は腰を浮かせると、宣言していた通りに熱を楓真の奥へ吐き出した。このまま飲めと言わんばかりに、吏紀の手は楓真の頭を押さえつけたまま離さない。思った通りに頭上から「飲んで……」と艶っぽい声が聞こえ、楓真は小さく首を振った。
「こぼさず飲んでよ、楓真君。そしたら酷いことしないからさ」
「………… 」
腰を引いた吏紀は期待した目で楓真を見つめる。息をすると嫌な生臭さが鼻を抜けた。いつまでも口内に含んでいるのも耐えられず、結局諦めて楓真はそれを飲み込んだ。
「ふざけんなよ……」
「いいから、ほら、おいで」
吏紀は座ったまま両手を広げ、楓真を抱えると「乗って」と促す。渋々楓真は足の上に跨り吏紀を睨んだ。睨んだところで意味はないのはわかっている。にやにやと嬉しそうな吏紀に尻を撫でられ、余計に悔しさが増した。吏紀の手が無遠慮に下着の下に滑り込み、その指先が奥の窄まりに触れると緊張で胸が苦しく泣きたくなった。
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